普通の人の普通の人による普通の人のためのベスト本

あなたの大切な人に薦めたい本、生涯の1冊は何ですか? 家族友人知人知らない人・・・ありとあらゆるネットワークを駆使して特別有名なわけでもないどこにでもいる普通の人たちのベスト本を聞きだし、ここで公開しています。 私のベスト本もここで紹介させてほしい!という方は気軽にメッセージをください。

『女子アナ以前 ~あのころのわたしと、いま考えていること。~』 私は女子アナじゃないけど、みんな同じ悩みを抱えて生きていたんだ。



★紹介者
Y.S29歳、女性、専業主婦


私の生涯大切にしたい本は「女子アナ以前
〜あのころのわたしと、いま考えていること。」という小島慶子さんの本です。

小島慶子さんは元
TBSアナウンサーで現在はフリーで活躍されているアナウンサーです。学習院女子高から学習院大を経てTBSに入社していたという華々しい経歴をお持ちの彼女ですが、こちらの著書にあるように、いろいろと人生に悩み、もがき苦しみ、生きてきました。

 

著者がアナウンサーとして自分自身悩みながら様々な番組を担当し、とあるラジオのパーソナリティとして才能を開花させたときに、「若いときは人から求められたいが為にまわりの評価に一喜一憂して気持ちを張り巡らせながらアナウンサーをやっていたが、常にナンバーワンを目指す必要なんて無いのだ」と述懐していた時のこの一言がすごく心に響きました。

 

その時に、私は女子アナでは無いけど、何故か共感してしまい、むしろ人として小島さんと同じ悩みを共有できたような気がしました。

 

その時、私自身仕事でかなり悩んでいた時期で、人に好かれようと猫を被ったり、気を張っていたこともあり、相当精神的に疲れていました。

そんな中、小島さんが「
20代のころまで模範的なアナウンサーになろうと思ってもがいていたけど、自分の大切なものを捨てずに生きてきたおかげで自分らしく生きることができた」と仰っているのを知って、共感を覚え、私も「猫被らずに、自分らしく生きていこう」と小島さんから生きるヒントを得て、勇気が出ました。

 

それ以降、自分自身何かにつまずいたり、生きることがつらくなったときは、この本に書かれてあることを思い出しながら、今を自分らしく生きるようにしています。

 



『間の楔』 ボーイズラブのイメージを崩壊させる小説好きに読んで欲しい一冊

間の楔 1 (キャラ文庫)
吉原 理恵子
徳間書店
2009-03-27


★紹介者

AK 、 28歳、女性、フリーランスアーティスト



 
現在では、BL(ボーイズラブ)という作品ジャンルが確立されて、女性を中心に当たり前の読まれるジャンルの一つとなっています。

 

しかし、男性や所謂オタクではない方々は、絶対に手に触れる事はないでしょう。

小説全般好きで読む立場として、今回は敢えて一部の方しか手を出さないジャンルとされているBL作品をご紹介したいと思います。

 

それが、吉原理恵子様の『間の楔~あいのくさび~』です。

 

実は私も小説を読むのは好きでも、特に男性同士の恋愛を描いた作品には、抵抗があったうちの一人です。

 

学生時代に友人から、これだけは絶対に良いからと勧められ、つまらなかったらすぐに返そうと思っていた、初版の『間の楔』を借りた事でこの本に出会いまた。

 

1ページ目を開いた瞬間から、その凄さが分かりました。

文字なのにまるで生きているような、いきなり脳内に直接幻想的な特殊な世界が映像として見えてきたのです。

 

作風はSFなのですが、初版は1986年というとても古い作品なのに、機械が人間を管理するという、まさにIT産業が盛んな現代を風刺したような、問題提起をされているような世界で、展開していく作風は、まさにハリウッド映画の様でした。

 

男性を増やし、女性を減らして、自由に人間が繁殖できない世界で、人口頭脳により管理された人間たち。

そこでは、人が人ではなく、完全なる格差社会を描いています。

 

男性しかいない世界では、性的欲求を男性同士で吐き出され、楽しみはドラッグ等しかない。

 

細かい設定や、その展開が、まさに小説として幻想的であり、これは女性たちが男性だけの恋愛の妄想を楽しむために作られた娯楽作品ではなく、芸術作品なのだと衝撃を受けました。

 

スラム街でいきている、リーダー格のカリスマ『リキ』と、世界を牛耳るIP頭脳により作られた、半分人間で半分ロボットのブロンドと呼ばれる、所謂貴族階級の『イアソン』。

出会うはずのない二人が、リキの頭の良さからくる悪戯心から出会い、『イアソン』が『リキ』に興味を抱くところから、二人の関係は始まります。

 

それは、主人とペットという、決して恋愛ではない関係です。

 

今でもBL系ではよく好まれる、俺様主人と奴隷の関係からの展開とは全く違います。

 

格差社会に常識を受け入れがたい人間らしい気持ちと、世界を管理する立場の最高頭脳が、人間らしさを取るのか、それとも完全なる合理性を取るのか。

常に感じさせられるのは、人間らしさの感情をえぐってくるような、時に胸が痛くなり、しかし人間の本来あるべき感情とは、こうではないのか?

 

各方面からの問題提起の連打に、感情が左右されるのです。

 

同じ立場の人間同士の足の引っ張り合いや裏切り、その対価として落ちていく姿。

人間が今、人間の為だからと遺伝子操作をして、人間の為に有益だと動物を作りだす行為を、人間でされている世界。

 

まさに社会を風刺した部分も感じられる世界の中で、完全なるブロンドであった『イアソン』が『リキ』の人間らしさに、引きずられ、捕らわれて、自分の利害がすべての思考回路が崩れていく姿は、とても悲しく、しかし愛おしく感じる事が出来ます。

 

 

ネタばれになるので、二人がどんな選択をするのかは、是非とも読んで頂いて確認してほしいですが、これは男女関係なく・・・

BLというジャンルに嫌悪を感じる人でも、芸術的な小説作品として読んで頂きたいと思います。

 

当時からの熱烈なファンの声に反映されるように、この当時としては異例な、ビデオアニメ化。CDドラマ化。イメージミュージックCD

まさに、男性同士の恋愛小説の世界に金字塔を打ち立てた、師玉の名作となっています。

 

初版本が販売されてから、長い時間を経て、原作者の吉原理恵子様自身が、単行本として加筆を加えてシリーズ化されて再販されています。

 

長くなった分、初版本の世界観の語られなかった真実がよく読み取れますが、所謂濡れ場のシーンも激しくなっているので、芸術作品小説しては、初版本をお勧めしたいかなと思います。

 

私は、吉原理恵子様の文章との相性が良いのか、全く抵抗なく読めますが・・・

そういうシーンが多いと抵抗がある方も多いと思うので。

 

文字を読むのが苦手な人でも、文章としてとても読みやすく、何よりも何度も読みたくなるような、深い構成力。そして言葉の運び方の上手さが、この名作が一部のファン層にアピールしている作風であり、何十年も前の、そういう趣向に閉鎖的だった時代でさえ、それだけの支持を得ていた証拠ともいえるのではないでしょうか?

 

だからこそ、もっと【間の楔】を読んで、どこに問題提起を感じてもらってもいい。

共感してもらってもいい。

一人でも多くの方が、この作品に出会って欲しいなと思いました。

 

 

私が個人的に好きなのは、やはり、この二人が選んだラストです。

 

それが、愛なのか?

それとも、情なのか?

 

私は、恋ではない、真の愛とは、きっとどこかで気付くものではなく、こうやって最後の最後で分かってしまう気持ちなのかもしれないと、最後のエピソードだけ何度も読んで、泣きました。

 

色んなキャラクターが出来てきて、どれも人間らしいし、どれもきっと自分の中にある感情をダイレクトに伝えてきてくれるので、好きになれないキャラクターの事も、何故嫌いなのかを考えると、自分も同じ立場ならやってしまうかもしれない。

否、自分はこっち側の人間なのかもしれないと、似ている事に不快を感じるのかもしれないと感じるキャラクターも沢山います。

 

世界観。問題提起。風刺。そして・・・真の愛とは?

間の楔とは?

 

答えはきっと『リキ』と『イアソン』のように、誰も出せないかもしれないけれど、だからこそ、感じて欲しいと思いお勧めさせて頂きました。

『きらめきのサフィール』 “ココロ”に光を取り戻す




★紹介者

AM37歳、男性、会社員



「あなたの大切な人に薦めたい本、生涯の1冊は何ですか?」


この一文を見た瞬間、真っ先に思い浮かんだのは、先月
2歳になったばかりの長男の顔と、この本、「きらめきのサフィール」である。

 

物語の冒頭はこうだ。

 

むかし むかし

ひとりの若い騎士が白い馬に乗って

はるかな国へ旅立っていきました

その国はきらめきの国

今はもうだれも知らない

けれどだれもが知っていた

不思議な物語の世界でした

 

どこで読んだ物語だろう。

なんというお話だったのだろう。

この文章を思い出すたびに、胸のなかが、ほんのひととき、暖かくなる。

 

その後に続くのは、この物語の主人公である『青山ココロ』がクラスメイトからひどいいじめを受けているシーンだ。

この物語の主人公「青山ココロ」は小学校6年生で、言葉を話すことが出来ない。

そんな彼をクラスメイトは「冬眠」と呼び、言葉が話せないから、まるで人としての感情も存在していないと決めつけたかのように、心ない言葉で罵り、暴力を加える。

 

そんなココロは家庭でも居場所がなく、母も父も、ココロに対して優しく接することはなく、むしろ邪魔者のように扱っている。

ココロの家の階段の壁にかけられた、立派な額縁に収められた絵について、ココロの父は「お前より何倍も価値のある絵だ」と言う。母は自分の思い通りの反応をしないココロに苛立ち、シャッター付きのガレージにココロを閉じ込めてしまう。

こういった場面を見ても、いかにココロが両親からも愛されていないかがわかり、まるで自分のことのように胸が締め付けられる。

彼の心の癒やしは、「エリウス」と名付けた古い自転車だけだ。

ココロはこの自転車に、たくさんのことを心の中から話しかけ、孤独を癒やす。それだけである。

 

物語はそのココロが突如、彼が「きらめき」と呼ぶ不思議な光に包まれた後、全く別の世界「サフィール」に迷い込み、そこで始まる彼の冒険に切り替わる。

 

どういうわけか、この異世界、サフィールでのココロは普通に自分の声で話しが出来る。

彼の自転車のエリウスは、立派な白馬となり、彼を背にこの世界を共に進んでいく。

この世界の住人たちは彼を「青い騎士」と呼び、世界を闇から救う救世主だと持て囃す。

 

「青い騎士、ココロ」に定められた目的は一つ。

世界を闇に包み込んでいる存在、魔王ジュダを倒し、光を取り戻すこと。

 

そんなココロの物語は、困難の連続であり、決して異世界で超人的な力を身につけたココロが、小気味よく数多の敵を倒していくような、痛快劇ではない。

言語を得たものの、彼に襲いかかる敵は、彼の肉体だけでなく、心にまでも傷を与え、彼だけでなく、この物語を読んでいる私までもを試し続ける。

襲いかかる敵、初めて出来た仲間との別れ、心奪われた少女の裏切り、そういった出来事がこの世界でのココロの存在も否定するかのように映し出す。

現実世界でそうであったように、ココロが誰にも必要とされていない、孤独な存在かのように。

 

高校生の私は、引き込まれるように読みきってしまったものの、その本が何を伝えようとしていたのかについては最後まで分からず仕舞いだった。

そしてそのまま、20年近くが過ぎ、すっかり大人になった私は、結婚し、子どもにも恵まれた。

2番めの男の子が生まれた頃、ふとした事でこの本を思い出し、どうしてももう一度読みなおして見たい衝動にかられた。

近くの書店や図書館などを探したが見つからず、諦めきれない私は実家からわざわざ郵送してもらい、去年もう一度この本を読み直すことができた。

そして、ようやくこの作者が伝えたかったことに、自分なりの答えが見いだせたような気がした。

 

高校生当時の私は当然、ココロに自身を投影して物語を読み進めていた。

だが、20年後の私は、むしろココロを純粋な一人の少年として、もしかしたら将来の息子と重ねあわせて読んでいたような気がする。

そして、光とは?闇とは?本当の勇者とは?について、もう一度考えることが出来た。

ただ、それに対しての明確な答えは本文にも書いておらず、あとがきにも書いていないので、自分なりの答えにしか出せないが、少なくとも高校生当時の自分には見えなかった、物語に隠された主題が見えた気がした。

何か特別な力があるから勇者なのではなく、主人公ではなく、特別な存在というわけではない。

自分に襲いかかる試練や困難、誘惑、それらにどう向き合い、乗り越えていけるかが、自分の物語であり、キレイにかっこ良く解決するからヒーローということでもない。

むしろ結果をおそれず、逃げることがあっても、いつかはそれに立ち向かう姿勢が大切なのだと。

 

ココロは幾度の試練に耐え、悲しみを越え、魔王ジュダを倒した後、元の世界に帰ってくる。

ふたたび光に包まれてこの世界に戻ってきたココロを見つけたのは、(残念ながら)両親ではなく、両親から出された捜索願いを受けて、ココロを探していた警察官だ。

警察官はココロに対し、やさしく真心のこもった声でココロの帰還を喜ぶ。

 

「きみはしゃべれないそうだから、どこへ行っていたかなんて教えてはもらえないだろうけれど、もどってきてくれただけでうれしいよ。」

真心のこもったその人の声に、ぼくはははっきりと応える。

「僕はサフィールというきらめきの国に行っていたんです。」

おまわりさんは驚いたようにぼくを見つめた。

 

僕はサフィールで騎士だった。

主人公だった。いちばんたいせつなそんざいだった

人はだれでも、心の中のサフィールで、主人公なんだ。

人はみんないちばんたいせつな存在なんだ。

 

この本を、私から息子に勧めるつもりはない。ある日偶然、私の本棚からこの本を見つけ、きまぐれに読んでくれれば、そしていつか自分に子どもができたら、この本を読ませてあげたいと思ってくれればそれで良いと思う。

『蘇える変態』 星野源著  

蘇える変態
星野 源
マガジンハウス
2014-05-09


★紹介者
S.Y、38歳、女性、保健師


今冬話題となったドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」を見て、主演でエンディングテーマも歌っていた星野源さんに興味を持ち、手に取った一冊です。


日々の事やシンガーソングライターに俳優、文筆家と言った多方面にわたる仕事のこと、下ネタ好きを公言していることからソレに関する話もあったりと、内容豊富な読み応えのあるエッセイになっています。

彼にはクモ膜下出血を患い、休業していた過去があります。

この本には、その当時の想像を絶する痛みとの闘いや彼の追い込まれた精神状態、医療関係者とのやり取り等淡々と描かれていて、読んでいて胸が苦しくなりました。
 

そして読後は、現在元気に活動している彼を見ることができて、素直にうれしいなと思えました。

素の『星野源』を垣間見ることができる、そして読後色々な意味で元気をもらえる一冊となっています。

彼に少しでも興味を持っている方は、読んでみてはいかがでしょうか?

『富士山頂』新田次郎著 男社会の闇。

富士山頂 (文春文庫)
新田 次郎
文藝春秋
2012-06-08


★紹介者

うらやす、女性、50代、シナリオライター

 



私はハードカバーで読んだ筈なのですが、今手に入るのは文庫版だけのようです。

201268日に発売されています。

 

新田先生が19126月生まれなので、新田次郎生誕百年記念で文庫化、もしくは復刻文庫化されたようですね。

 

台風予知を主眼として、富士山に気象レーダーを設置する工事が立案され、大蔵省(現在は、財務省と金融庁が後継官庁)の予算が通過。

 

山にも詳しく、気象庁内に派閥を持たない葛木章一が、工事発注の責任者となります。

国家的な大プロジェクトなので、受注したい重電会社はあの手この手でかれを口説こうとしますが、葛木は一切の情実を排して冷静な発注をします。

 

どうしても参加したい某社は、分割発注の噂を流したり、観測機器の実力勝負を持ちかけたりしてきます。

 

葛木が陥落()ちないので、葛木の上司に圧力をかけたり…

上司は葛木と同じ目線に立ち、某社の画策を突っぱねてくれますが、それはとりもなおさず上司から、天下り先を一つ奪う行為なのです。

 

私はこの、企業論理と戦う第一章が大好きです。

19702月に東宝系で封切られた、 村野鐵太郎監督、石原裕次郎主演、石原プロモーション製作の映画も、感想を書いてたりするブロガーさんも、口を揃えてレーダー設置の苦労話と、レーダーが無事運用になって喜びあう部分を取り上げているのですが、私は社会的心理戦の第一章が圧倒的に好きなのです。

まさに男社会の闇。

ちなみに葛木章一は、新田先生本人がモデルです。

 

★この本を勧める理由

 

 社会と人の関わりの話が好きなので。

 星新一先生の、「人民は弱し官吏は強し」も面白かったけど、これは一読目だけ。

 初めて、“読んで怒りを覚えた”小説だったのに、二読したらそんなでもなかった。

 「富士山頂」は何度読んでも“幽霊”の暗躍するところがドキドキします。

 

★手に取ったきっかけ

もともと新田先生は好きで、「八甲田山死の彷徨」「聖職の碑」「銀嶺の人」とか好きで。

新田先生の奥様が藤原ていさんだとは知ってたけど、藤原正彦(数学家、エッセイスト)が息子(次男)とは知らなかった。

 なんか好きじゃないあのひと…

ちなみに新田次郎先生は皇太子様もお気に入りの山岳小説家だそうです

タグクラウド
  • ライブドアブログ