富士山頂 (文春文庫)
新田 次郎
文藝春秋
2012-06-08


★紹介者

うらやす、女性、50代、シナリオライター

 



私はハードカバーで読んだ筈なのですが、今手に入るのは文庫版だけのようです。

201268日に発売されています。

 

新田先生が19126月生まれなので、新田次郎生誕百年記念で文庫化、もしくは復刻文庫化されたようですね。

 

台風予知を主眼として、富士山に気象レーダーを設置する工事が立案され、大蔵省(現在は、財務省と金融庁が後継官庁)の予算が通過。

 

山にも詳しく、気象庁内に派閥を持たない葛木章一が、工事発注の責任者となります。

国家的な大プロジェクトなので、受注したい重電会社はあの手この手でかれを口説こうとしますが、葛木は一切の情実を排して冷静な発注をします。

 

どうしても参加したい某社は、分割発注の噂を流したり、観測機器の実力勝負を持ちかけたりしてきます。

 

葛木が陥落()ちないので、葛木の上司に圧力をかけたり…

上司は葛木と同じ目線に立ち、某社の画策を突っぱねてくれますが、それはとりもなおさず上司から、天下り先を一つ奪う行為なのです。

 

私はこの、企業論理と戦う第一章が大好きです。

19702月に東宝系で封切られた、 村野鐵太郎監督、石原裕次郎主演、石原プロモーション製作の映画も、感想を書いてたりするブロガーさんも、口を揃えてレーダー設置の苦労話と、レーダーが無事運用になって喜びあう部分を取り上げているのですが、私は社会的心理戦の第一章が圧倒的に好きなのです。

まさに男社会の闇。

ちなみに葛木章一は、新田先生本人がモデルです。

 

★この本を勧める理由

 

 社会と人の関わりの話が好きなので。

 星新一先生の、「人民は弱し官吏は強し」も面白かったけど、これは一読目だけ。

 初めて、“読んで怒りを覚えた”小説だったのに、二読したらそんなでもなかった。

 「富士山頂」は何度読んでも“幽霊”の暗躍するところがドキドキします。

 

★手に取ったきっかけ

もともと新田先生は好きで、「八甲田山死の彷徨」「聖職の碑」「銀嶺の人」とか好きで。

新田先生の奥様が藤原ていさんだとは知ってたけど、藤原正彦(数学家、エッセイスト)が息子(次男)とは知らなかった。

 なんか好きじゃないあのひと…

ちなみに新田次郎先生は皇太子様もお気に入りの山岳小説家だそうです